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 選択的夫婦別氏制を認めない最高裁大法廷判決に異議あり(2016.2.10 山本 勝敏会員)

 

 はじめに
 昨年12月16日、最高裁大法廷が、結婚に際して、夫婦が協議して夫婦いずれかの氏を名乗ることにしている現在の制度(夫婦同氏制)は憲法に違反しないという判断を示しました。このことは皆さんご存じのことと思います。結婚前から使い慣れた氏を、結婚を機会に名乗れなくなることによって、日常生活であるいは職場で大変な不便と辛い思いをされてきた多くの女性は、最高裁が選択的夫婦別氏制に踏み切ってくれるのではないかと期待していただけに、その失望には大変大きなものがあります。


 夫婦同氏制ってなんだ
 夫婦同氏制は、実は明治時代から続いている制度です。戦前と言えば、家制度があって、家父長制のもとで男尊女卑が当たり前だったため、嫁は家に入るもの、家の氏を名乗って当然と考えられていました。戦後新しい憲法ができて男女平等になり、家制度は廃止されたのですが、夫婦が対等な立場で協議していずれの氏を名乗るかを決めるのだから男女平等ということで、家制度の名残を残す夫婦同氏制は維持されました。


 夫婦同氏制のなにが問題なんだ
 氏名は個人の人格の象徴なので、氏を変更するということはその人の人格の一部が奪われたに等しいのです。わが国も先進国の例に漏れず女性の社会進出が目覚ましく、女性は結婚前の氏名により職場や生活の場で独立した個性として認められています。ところが、結婚によって夫の氏に変わることによって、女性は氏という個性を失い、それまで女性が持っていた私自身(アイデンティティー)の一部を失うのです。夫婦同氏の持つ本質的問題は、氏という人格、個性の喪失を夫婦になろうとする者の片方、もっぱら女性に強いるところにあるのです。


 夫婦で協議して決めるからいいのか
 でも夫婦で協議してどちらかの氏に決めるんだから仕方ないんじゃないのと思われるかもしれません。しかし、現実に96パーセントを超える夫婦が夫の氏を称する結婚をしていることをご存じですか。つまり、わが国の現実社会における男女の力関係のもとでは、女性が一方的に氏という人格、個性の喪失を強いられているのです。氏名が人格権の一部をなし、それが男女の別なく平等に尊重されるべきであるとするならば、結婚に際してもっぱら女性に氏の変更を強いる夫婦同氏制は男女平等を定めた憲法に違反するというほかないのです。


 世界では夫婦の氏はどうなっているのか
 世界的に見て、多くの国では夫婦同氏のほかに夫婦別氏が認められており、
例外を許さない夫婦同氏制を採用しているのはわが国以外にほとんど見あたりません。わが国でも、平成8年に法制審議会が法務大臣に選択的夫婦別氏制を答申し、国会でも選択的夫婦別氏制が繰り返し議論されてきました。国際連合の自由権規約委員会、女子差別撤廃委員会からも、平成15年以降、わが国も承認した女子差別撤廃条約に従い夫婦同氏制を廃止するようにと繰り返し求められています。


 じゃあ、どうすればいいんだ
 結婚しようとする男女が話し合って納得して、片方の氏を名乗ることは、仮に、それがもう片方の氏という人格、個性の喪失を伴うとしても、二人が了解して夫婦同氏にするのであれば自由です。しかし、夫婦が別々の氏でいいと考えているにもかかわらず夫婦同氏を強いたり、女性が別氏を希望しているのにもかかわらず夫婦同氏を強いることは、男女の平等に反しています。世界の国々と同じように、わが国も選択的夫婦別氏制に改める時代を迎えていることは間違いありません。私は、わが国が偏狭なナショナリズムに走らなければ、あと10年から20年の間に選択的夫婦別氏制になっていると確信します。

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