青年法律家協会岡山支部
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H28.7.10の参院選の結果を受けて(2016.8.4 藤川 智子会員)

 

 選挙が終わってから早1ヶ月が経ちました。
 みなさんにも政治や憲法について考えてほしいな,と思った経緯や理由について,徒然なるままに書かせていただきます。

 

1.はじめに,私が生まれて初めて,この度の選挙期間中に街頭演説した内容をここに引用したいと思います。

 

 「私は,これまで政治に関心はなく,政治家は,別世界の人だと思ってきました。
もちろん,私の1票が,自分の生活や日本の将来に影響があるとは思っていませんでした。
 でも,社会人になってみて, 政治というものは,私たちが無関心になればなるほど,どんどん遠い存在となり, 私たちの声が,どんどん国会に届かなくなっていることに気がつきました。
 イギリスの国民投票で, ほんのわずかの差でEU離脱となり,後悔している人々を目の当たりにしました。
 投票に行かなかった人が,EU残留に票を投じていれば, 結論は確実に変わっていました。

 

 これだけは言えます。
 私たちの1票1票の積み重ねで,日本の将来を必ず,変えることができます。」

 

 実際,いろんな複雑な問題が絡み合った今回の選挙で,市民たちの目覚めにより,ある一定の成果が出たと感じています。ただ,まだまだスタートラインに立ったばかりです。

 

2.そこで,今回の選挙やその後について,少し振り返ってみたいのですが,法律家のHPですので,中でも,憲法の問題に焦点を当ててみたいと思います。

 

 今年7月10日の参議院議員選挙の前でも後でも,一部のメディア・学者・弁護士・市民たちが,「憲法改正が」,「議席数3分の2が」と言っていたのでしょうか。
 1つ1つ整理していきたいと思います。

 

Q 1 なぜ今回の参院選で,メディア・学者・弁護士たちは,憲法が,憲法改正がと言っていたのか。

 

① 安倍さんは,「我が党は,憲法改正を党是としている」と言っていました。
② 安倍さんは,今年1月,NHK番組で「改憲を考えている人たちと,3分の2を構成していきたい」と発言しました。
③ 安倍さんは,今年3月,国会で「在任中に(憲法改正を)成し遂げたい」と答弁しました。
④ 安倍さんは,選挙時は,経済経済と言って,クローズアップしていなかったけれども,選挙後,世論の多くの反対を押し切って,特定秘密保護法や安保関連法を通しました。
⑤ 憲法改正発議の要件は,衆参両院の総定員数の「3分の2」以上の賛成(憲法96条)です。

 

このような経緯からすれば,衆議院でも参議院でも改憲勢力が「3分の2」を獲得した今,メディア・学者・弁護士・市民が, 「まだ国民に憲法について理解が深まっていないよー!!!」とシャウトし,経済が気になる市民や市場関係者が,「安倍首相の勢力を,憲法改正ではなく,経済を第一に発揮してー!!!」と求めたとしても,国民は,憲法改正の発議を止めることができないことが大いに予想できます。

 

Q 2 憲法改正の要件は
 憲法96条
 (1)衆参両院の総定員数の3分の2以上の賛成で発議された後,
 (2)国民投票で,投票数の(by国民投票法)過半数以上の賛成
        
国民投票で憲法改正が決まるのであれば,民意だから良いんじゃないの?

 

 しかし,
① 憲法のことを勉強して理解できているという国民は残念ながらまだまだ少数でしょう。
② 弁護士でさえ,憲法についてよくよく考えていない人が少なくないでしょう。
③ 学者や弁護士の中でも,憲法について講演する人はまだまだ限られています。
④ 国民の中には,日々の生活でいっぱいいっぱいで,選挙や国民投票のこと考える余裕がない方々もいっぱいいらっしゃいます。
⑤ マスコミが,憲法について報道したとしても,改憲草案支持者が気に入らない報道であれば,マスコミにクレームの電話が殺到し,マスコミも仕事にならないから,憲法について適切な情報を国民に伝えられないおそれがあるでしょう。
⑥ テレビも新聞見ない方,本を読まない方も大勢いらっしゃいます。
⑦ (テレビや新聞見るとしても),安倍さんは,メディア戦略に長けています。
⑧ 改憲草案を見る人はほんの一部だし,見て意味が分かる人はさらに限られてきます。

 

 このような状況下で,憲法改正の発議がされてしまうことのリスクを,今一度考えていただけたらなと思います。

 

Q3 じゃ,憲法って?

 

 憲法についてまだまだ理解は深まっていなくて,改正すべきか否を議論する前に, まず「知憲」から始めてほしいなと思います。

 

 権力そのものが,あるいは,たとえば安倍さんが,一概に悪いと言っているわけではありません。
 誰しも,権力の座につけば恣意に働きやすいので,「法の支配」や近代的憲法という価値観が生まれたのです。
 「法の支配」の本当の意味は,専断的な国家権力の支配(人の支配)を排斥し,権力を法で拘束することによって,国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理のことを指します。 
 近代的憲法である今の日本の憲法は,「法の支配」の体現といえます。
 憲法は,国家権力が国民の権利・自由を制約する法律とは性質を異にしている大事な要素を有しているのです。
 いうなれば,今の憲法が嫌いな人にとっても,好きな人にとっても,今の憲法は,国家権力の前では,国民の味方なのではないかと思います。

 

Q 4 改憲?
 私は,お恥ずかしながら,これまで,憲法改正についてきちんと考えたことがなかったのですが,最近,私が考えたことをここに書いておきたいと思います。

 

 同じく「改憲」といっても,ひとくくりにはできないことだけはなんとなく分かりますが,大きく2つの分類ができるかもしれません。

 

① 国民にとって,現状維持 or プラスにしていこう
 ・これまでの政府や判例の解釈を明文化しよう or 国民にとって良いものにをプラスしていこう,
 ・時代に即した新たな権利規定を設けよう

 

② 国民にとってマイナス・国家権力にとってプラスにしていこう
・国民の権利・自由を小さくしていこう
・国の権限を大きくしよう

…平成24年4月27日付自民党改憲草案は,基本的に②の部類に含まれるでしょう。

 

Q 5 これから,私たち国民にできることとは?
 
 このような事情があることから,私は,国民の中で,憲法への関心や理解がまだまだ広がっていない状況で,衆参両院で改憲勢力が3分の2を確保した今,国民がよく分からないままに,大事な条文を変えてしまったり,国民にとって不利益な条文が加わったりしてしまうのではないかと,さらに危惧しています。
 しかも,この度の低投票率です(北欧では,投票率が80%を超える国も)。

 

 選挙後,若干絶望的になりそうになったとき,私はある番組でのある言葉を思い出しました。ある番組で紹介されていた,池上彰さんの好きな言葉です。

 

「私達一人ひとりの行動で政治は動く。微力ではあるが“無力ではない”。」

 

 私も,これまでの無関心をやめて,少しずつ政治や憲法について考えたり行動したりしたいと考えています。
 みなさんも,一緒に,政治や憲法について知ることや考えること,始めてみませんか。

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 事務局長 弁護士 岡邑 祐樹

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