青年法律家協会岡山支部
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 南スーダンへの駆けつけ警護の問題性(2016.10.28  森岡 佑貴会員)

 

0 はじめに
 最近、南スーダンへの駆けつけ警護の言葉をニュース等でよく見聞きすることが増えました。今回のコラムはこの南スーダンへの駆けつけ警護の話をしたいと思います。

 

1 南スーダン共和国とは
 2011年7月9日、スーダン共和国の南部10州が独立し、誕生した国家で、エジプトの南にあるのが、スーダン共和国、さらにその南にあるのが南スーダン共和国です。人口は約1130万人(2013年)、首都はジュバです。

 

2 南スーダンを取り巻く状況
 2013年、南スーダンのキール大統領がマシャール副大臣を解任したことを契機として両者の出身民族のディンカ人とヌエル人との間の民族紛争を勃発し、両民族が内戦状態となりました。2015年8月、政府間開発機構による調停の下、キール大統領派とマシャール派とが合意し、平成28年4月26日、マシャール氏が第一副大統領に就任し、同29日には国民統一暫定政府が設立されました。もっとも、両陣営の対立は続いており、政府軍と反政府軍とに分かれ、銃撃戦等は断続的に続いている状況です。今年7月にも首都ジュバで戦闘が発生し、300人以上が殺害されたと報道され、その後も散発的な衝突は絶えない状況にあると報道されています。
 この7月の事件を巡っては、10月11日の参議院予算委員会において、民進党の大野元裕氏が稲田防衛相に対し「(政府軍と反政府軍との)戦闘ではなかったのか」「戦闘であれば内戦ということになる。」と質問を行いました。これに対し、稲田防衛相は「『戦闘行為』とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為」とした上、「こういった意味における戦闘行為ではない。衝突であると認識している。」と回答しました。この回答に対し、大野氏は「戦闘ではなかったのか」と再三質問を行いました。
 稲田防衛相に代わって答弁した安倍首相も「武器をつかって殺傷、あるいは物を破壊する行為はあった」とした上で、「戦闘をどう定義づけるかということについては、国会などにおいても定義がない。大野さんの定義では『戦闘』となるかもしれないが、我々は一般的な意味として『衝突』、いわば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている」と発言しました。


3 自衛隊の派遣
 自衛隊は、2011年よりPKO協力法に基づいて道路などのインフラ整備のため南スーダンへ派遣されています。
 もっとも、昨今の報道からも分かるように現地は内戦状態が続いており、大変危険な状態です。
 このような状況の中で、日本は、南スーダンにおいて駆けつけ警護を行うため、9月14日から陸上自衛隊第9師団の訓練を開始しています。
 10月8日には、稲田防衛相が首都ジュバを訪問し「落ち着いていることを見ることができ、関係者からもそういう風に聞くことが出来た。」と報道陣に対し答えているが、既に述べた参議院予算委員会でのやりとりからも明らかな様に現在も政府軍と反政府軍との衝突があり、「戦闘」が行われています。

 

4 駆けつけ警護とは
 駆けつけ警護とは、民間人や国連職員、他国軍兵士などが武装集団に襲われた場合、武装して助けにいくというものです。駆けつけ警護は、本年3月に施行された改正PKO協力法を根拠として行われるものです。
 改正PKO協力法は第3条五号ラにおいて「ヲからネまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとしてナの政令で定める業務を行う場合であって、国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者(以下このラ及び第二十六条第二項において「活動関係者」という。)の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護」について国際平和協力業務として自衛隊が行うことが認められ、この「活動関係者」の生命又は身体を保護するために武器を使用することが同法26条2項で許されています。
 なお、憲法9条との関係でいえば、この国際平和協力業務は改正PKO協力法2条2項において「国際平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」とされています。

 

5 憲法9条に反すること
 しかしながら、駆けつけ警護は改正PKO協力法に基づいて行われたとしても憲法9条に反し、違憲です。
 今回の南スーダンでは、今回の南スーダンでの政府軍と反政府軍との一連の衝突は武器を用いて不特定多数の者が殺傷し合うものであり、「戦闘行為」といえることは明らかです。このような「戦闘行為」が現に行われている現地で「活動関係者」を保護すべく、武器を使用する相手は政府軍ないしは反政府軍であり、いずれであったとしてもこのような武器の使用はいずれかの軍との「戦闘行為」に変わりません。
 したがって、駆けつけ警護は憲法9条の禁止する「武力の行使」にあたり、違憲であることは明らかです。

 

6 おわりに
 このように今回の駆けつけ警護は、憲法9条に反するものであり、これを強行することは許されません。
 皆さんも本コラムを契機に駆けつけ警護の問題について考えてみてください。

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