青年法律家協会岡山支部
  • ホーム
  • 岡山支部声明
  • 会員コラム
  • 憲法出張講座
  • 活動報告
  • 事例報告
  • リンク集

教育勅語の幼稚園教育での利用について(2017.10.30 岡邑 祐樹会員)

 

○クローズアップされた教育勅語
  今年の春ごろ,森本学園の国有財産値引き売却事件が問題になりましたが,そのときに,森本学園の経営する塚本幼稚園の教育とりわけ教育勅語を用いた教育方針がクローズアップされました。
  報道によりますと,具体的には,園児に教育勅語を暗唱させていたということです。

 

○教育勅語にはよいこともかいてあるのでは?
  森友学園の塚本幼稚園が教育勅語を教育に用いていることについて,教育勅語にはよいことも書いてるのではないかという意見もあります。
  確かに,教育勅語の中には「父母に孝行を尽くしなさい」「兄弟姉妹仲良くしなさい」などという国民の心構えが書かれているところがあります(十二の徳目などと呼ばれます)。このことから,目くじらを立てることではないという意見もあるようです。
  しかし,この文章の背景や文脈には多くの問題があります。教育勅語の冒頭部分にはこうあります。
  「朕が思うに,我が御祖先の方々が国をお肇めになったことは極めて広遠であり,徳をお立てになったことは極めて深く厚くあらせられ,又,我が臣民はよく忠にはげみよく孝をつくし,国中のすべての者が皆心を一にして代々美風をつくりあげて来た。これは我が国柄の精髄であって,教育の基づくところもまた実にここにある。」(WIKIPEDIAより引用。現代語訳は旧文部省による)
  このように,天皇中心の日本を前提として国家の繁栄を願うものが教育勅語であり,そのための手段として,「父母に孝行を尽くしなさい」「兄弟姉妹仲良くしなさい」と言い,さらには,「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼」(事が起これば国民として力を尽くせ)と言っているのです。
  これが,日本国憲法下での考え方に全く合わないのは明らかです。

 

○教育勅語を使用する必要があるのか
  また,そもそも,十二の徳目を園児や生徒に教えるために,教育勅語を使用する必要があるのでしょうか。単に,「親族や友だちを大事にしようね。」ということを伝えたいのであれば,教育勅語を使用する必要はありませんね。必要があるとすれば,それは,「天皇陛下がおっしゃったことだ」とか,「明治時代から受け継がれているんだ」という,権威付け,正統性のためということになるでしょう。しかし,その点を重視するのであれば,教育勅語の背景に踏み込まざるを得ません。これほど使いづらい教材はありません。
  また,園児たちが,古文体の教育勅語を暗唱できるようになったとしても,内容を正確に理解していたかどうか疑問です。園児たちが,その内容を理解しないまま,「天皇陛下がおっしゃったことだ」とか,「明治時代から受け継がれているんだ」という,権威付け,正統性を雰囲気的に感じとるだけの教育であれば,有益でないどころか,有害ですらあります。

 

○戦後否定された教育勅語
  一番重要なことは,教育勅語は1948年に,衆議院で「排除」,参議院で「失効」の決議がなされたことです。衆議院の排除決議においては、教育勅語について「根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は,明らかに基本的人権を損い,且つ国際信義に対して疑点を残すものとなる」と,憲法違反であるとして排除を決議したのです。
 ところが,かかる一連の騒動の末,安倍内閣は2017年3月31日に教育勅語を「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」旨の閣議決定しました。
  しかし,憲法違反とされた教育勅語を「憲法や教育基本法に反する部分」と「憲法や教育基本法に反しない部分」に截然と切り分け,「憲法や教育基本法に反しないような形」で利用することは困難です。
  教育勅語は,あくまでも,歴史的な資料としてのみ利用されるべきで,教育勅語自体を是として受け入れる教育がなされることがあってはなりません。

  • コラム63
  • コラム62
  • コラム61
  • コラム60
  • コラム59
  • コラム58
  • コラム57
  • コラム56
  • コラム55
  • コラム54
  • コラム53
  • コラム52
  • コラム51
  • コラム50
  • コラム49
  • コラム48
  • コラム47
  • コラム46
  • コラム45
  • コラム44
  • コラム43
  • コラム42
  • コラム41
  • コラム40
  • コラム39
  • コラム38
  • コラム37
  • コラム36
  • コラム35
  • コラム34
  • コラム33
  • コラム32
  • コラム31
  • コラム30
  • コラム29
  • コラム28
  • コラム27
  • コラム26
  • コラム25
  • コラム24
  • コラム23
  • コラム22
  • コラム21
  • コラム20
  • コラム19
  • コラム18
  • コラム17
  • コラム16
  • コラム15
  • コラム14
  • コラム13
  • コラム12
  • コラム11
  • コラム10
  • コラム9
  • コラム8
  • コラム7
  • コラム6
  • コラム5
  • コラム4
  • コラム3
  • コラム2
  • コラム1

お問い合わせ先

【事務局】

電話 086-436-7441

 

〒710-0836

 岡山県倉敷市沖165-1 1階

 岡邑法律事務所内

 事務局長 弁護士 岡邑 祐樹

Copyright(c)2011 青年法律家協会岡山支部 All Rights Reserved
ログアウト | 編集
  • ホーム
  • 岡山支部声明
    • 支部声明5
    • 支部声明4
    • 支部声明3
    • 支部声明2
    • 支部声明1
  • 会員コラム
    • コラム63
    • コラム62
    • コラム61
    • コラム60
    • コラム59
    • コラム58
    • コラム57
    • コラム56
    • コラム55
    • コラム54
    • コラム53
    • コラム52
    • コラム51
    • コラム50
    • コラム49
    • コラム48
    • コラム47
    • コラム46
    • コラム45
    • コラム44
    • コラム43
    • コラム42
    • コラム41
    • コラム40
    • コラム39
    • コラム38
    • コラム37
    • コラム36
    • コラム35
    • コラム34
    • コラム33
    • コラム32
    • コラム31
    • コラム30
    • コラム29
    • コラム28
    • コラム27
    • コラム26
    • コラム25
    • コラム24
    • コラム23
    • コラム22
    • コラム21
    • コラム20
    • コラム19
    • コラム18
    • コラム17
    • コラム16
    • コラム15
    • コラム14
    • コラム13
    • コラム12
    • コラム11
    • コラム10
    • コラム9
    • コラム8
    • コラム7
    • コラム6
    • コラム5
    • コラム4
    • コラム3
    • コラム2
    • コラム1
  • 憲法出張講座
  • 活動報告
  • 事例報告
    • 事例6
    • 事例5
    • 事例4
    • 事例3
  • リンク集
  • トップへ戻る