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 平成26年7月1日安倍閣議決定は、憲法法理論上、なぜ違憲なのか(2015.4.11 山本 勝敏会員)

 

 はじめに
 前回、平成26年7月1日安倍閣議決定は、なぜ従来の政府見解を逸脱し、憲法第9条に違反するのかを述べましたが、憲法法理論的にその違憲性を論じると次のようになります。


 憲法第9条本来の解釈
 まず、憲法第9条の条文解釈について、憲法学者の主流は侵略戦争だけでなく自衛戦争も否定していると解釈しています。昭和21年6月26日衆議院帝国憲法改正本会議での吉田茂首相の政府答弁も、憲法第9条は自衛権を否定していないが、同条2項で一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また、交戦権も憲法は放棄したと述べていて、憲法学者の主流と同じく自衛戦争を否定しています。つまり、憲法第9条が、個別的自衛権の発動である自衛戦争を否定して誕生したことは間違いのない事実です。


 政府解釈の変遷
 政府の答弁が変わるのは、冷戦勃発と昭和24年10月中華人民共和国が成立した後、昭和25年念頭の辞において、連合国軍最高司令官マッカーサーが、この憲法の規定は、相手側から仕掛けてきた攻撃に対する自己防衛の侵しがたい権利を全然否定したものとは絶対に解釈できないと述べてからです。同年6月、朝鮮戦争が勃発し、警察予備隊が創設され、翌昭和26年2月、衆議院予算委員会において吉田茂首相は、日本の安全は日本の手で守る、守る権利があり義務があると答弁します。昭和27年4月、サンフランシスコ講和条約が結ばれ日本は主権を回復、同時に日米安保条約が発効し、警察予備隊が保安隊に改組されます。昭和29年6月、自衛隊法が成立し、同年12月、衆議院予算委員会において、内閣法制局長官は、憲法第9条は、自衛隊のような国土保全を任務とし、そのために必要な限度において自衛力を持つことを禁止していないと答弁し、従来の政府見解の基となる見解が述べられています。


 従来の政府見解による憲法第9条解釈
 その後、昭和34年12月砂川事件最高裁判決によって、憲法第9条によって、わが国が主権国として持つ固有の自衛権はなんら否定されたものではないとされましたが、同条2項がいう保持を禁止した戦力とはわが国自体の戦力を指すと最高裁は述べており、自衛のためであっても戦力は保持できないとの見解を示しています。最高裁判決が出たことから、政府はこれを踏まえた憲法第9条解釈を考え出し、それが前回述べた昭和47年10月14日参議院決算委員会政府提出見解です。つまり、わが国に対する急迫不正の侵害が発生し、武力行使のほかに取り得る手段がなく、わが国防衛のための必要最小限度のものという見解です。この見解は、国連憲章第51条に規定する個別的自衛権を憲法第9条2項に適合するようにさらに制限的に解釈したものです。つまり、憲法第9条2項が戦力の不保持と交戦権の否認を定めているため、前者については、自衛隊はわが国を防衛するための必要最小限度の武力行使にとどまるから戦力にあたらないとし、後者については、相手国領土の占領や自衛に必要な最小限度を超える武力行使は認められないから交戦権にあたらないとしました。そのため、自衛隊が弾道ミサイルや航空母艦、長距離爆撃機などを保有することは自国防衛の範囲を超えるとして認めてこなかったのです。従って、従来の政府見解が、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにも関わらず実力をもって阻止する権利、つまり集団的自衛権は憲法第9条で認められないとしているのは当然のことなのです。


 従来の政府見解と憲法適合性
 ところで、従来の政府見解が上記のような憲法第9条解釈をしているとして、そのような解釈が憲法第9条に違反しないかが問題となります。憲法第9条解釈としては非常に技巧的で無理にこじつけた解釈ですが、あえて憲法適合性をいうとすれば、国民の憲法規範意識が時代の移り変わりとともに変化し、憲法典の一部が憲法典所定の憲法改正手続きを経ずに事実上改変されるに至った、つまり、憲法の変遷が生じたとするほかないでしょう。もう少し具体的にいうと、戦後、長年の国会内外の議論の蓄積を経て、国民の憲法意識の中に、わが国に対する現実の武力攻撃が発生し、武力による反撃によるほか取り得る手段がない場合において、国民の生命・身体・自由・財産などを防衛するために行われる自衛隊による専守防衛行為はやむを得ないとの変化が生じ、定着したという解釈です。


 安倍内閣閣議決定は憲法解釈からの逸脱であり、憲法の破壊である
 そこで今回の安倍内閣閣議決定です。従来の政府見解を憲法の変遷理論により合憲と解釈できたとして、今回の安倍内閣閣議決定を同じ理論で憲法第9条に違反しないといえでるでしょうか。この点はどのようにこじつけても無理だと思います。なぜなら、従来の政府見解は戦後数十年の国会内外の議論を経て国民意識の中に次第に浸透し、現在では専守防衛に徹することを前提に自衛隊の存在は認められています。しかし、国会内外で議論が闘わされた結果、国民の憲法意識において自衛隊が専守防衛の範囲を超えて自ら海外に出動して武力行使することを支持する処となっているとは言えず、ましてや、わが国が攻撃されてもいないにも関わらず、他国が侵害されたことを理由に自衛隊が集団的自衛権を行使することなどこれまで国会内外で本格的に議論されたこともなく、国民意識の中にその必要性が浸透し、これが支持されるに至っているなどという事実はどこにも存在しないからです。つまり、従来の政府見解を憲法の変遷理論により肯定できたとしても、これを逸脱した安倍内閣閣議決定を合憲と解釈する余地は憲法法理論上存在しないのです。今回の安倍内閣閣議決定は、憲法改正が困難なためにこれを回避しようと考えて、憲法の基本原理である国民主権・平和主義・基本的人権尊重を破壊する意図のもとに行われたものであり、憲法法理論上、憲法解釈からの逸脱であり、憲法の破壊にあたります。

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