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 名古屋入管で起きた死亡事件の開示と入管の在り方について(2022.1.19 莖田 信之会員)

 

1 スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が2021(令和3)年3月6日、収容中の名古屋出入国在留管理局の施設で病死した問題で、出入国在留管理庁は、調査チームを発足させ、2021(令和3)年8月10日、「名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告(概要)」及び「令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」(以下「調査報告書」という。)を公表している。

  調査報告書には、本件が発生した当時の名古屋局の体制や事実経過、本件における名古屋出入国在留管理局の対応についての検討結果が記され、改善策が記載されている。

  また調査報告書には、収容施設が被収容者の自由を制約して収容する施設であることから、全ての職員は自らが被収容者の生命と健康を守る責務を有することを自覚して業務に当たることが基本であるとされ、被収容者の健康状態が徐々に悪化し、最終的に外観上の顕著な変化が生じてその生命や健康が危惧される状況は、被収容者の生命と健康を預かる収容施設にとって、危機というべき事態であり、適切に対処するために情報共有及び対応体制の構築を整えなければらないとされている。

  その上で、調査報告書の改善策として、全職員の意識改革、的確な情報の把握と共有に基づき医療的対応を行うための組織体制の改革、医療体制の強化や被収容者の健康状態を踏まえた仮放免判断の適正化が記載されている。

 

2 本件のような事態が生じないよう、改善策に基づき、意識改革や情報共有がとられなければならないが、上記調査報告書は出入国在留管理庁の調査チームがまとめたものであり、第三者の機関が調査したものではない。入管でのウィシュマさんに関する全ての資料が開示され、それを基にした調査を行い改善策を第三者の機関において検討することがより抜本的な改善策を構築すると考えられる。

  2021(令和3)年12月24日、入管は、ウィシュマさんが亡くなる直前の様子が映った施設の監視カメラ映像である13日間分を約6時間半に編集したものを衆議院の法務委員会の議員らに開示した。開示後、野党筆頭理事の階猛氏(立憲民主党)が記者団の取材に応じ、入管庁がまとめた調査報告書について「なるべく事実を矮小(わいしょう)化しようという意図が透けて見える」と述べたと報道されている(2021年12月24日朝日新聞DIGITAL)。同日には、名古屋地裁でもウィシュマさんの遺族に映像が開示されたようである。

  また2021(令和3)年12月27日には、監視カメラ映像が参議院の法務委員会の議員らにも開示された。映像を見た野党筆頭理事の有田芳生氏(立憲民主党)が記者団の取材に「聞きしにまさる異様なビデオだった。入管が人間の尊厳を無視し肉体を破壊する様子をまざまざと見た」と語ったと報道された。さらに有田氏は「普通の人間なら危ないと思うはずの状況。職員はどう報告したのか。国会で集中審議を開き、看守日誌などの公開を求めたい」と語っている。(2021年12月27日朝日新聞DIGITAL)。    

 

3 本件以前にも入管での問題は生じており、2020(令和2)年8月28日には、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会から、日本の外国人収容制度は自由権規約9条等に違反しているという意見が出されていた。

   出入国管理及び難民認定法は、入管に広範な裁量を認め、全件収容主義を採用し、収容にあたっては収容期間の上限が定められておらず、かつ、司法審査が導入されていない。

  再発防止にあたっては出入国管理及び難民認定法の現状認識を前提とした上で、国連人権理事会からの意見にも耳を傾ける必要があるのではないかと思われる。

 

4 ウィシュマさんの遺族は国家賠償請求訴訟を行う方針であること、また、刑事告訴を行う予定であることなども報道された。

  これまでに調査報告書が作成され、衆参両議院の法務委員会でウィシュマさんの生前の一部の監視カメラ映像が開示されるに至ったが、今後どのように映像やその他の資料が開示されていくのか本件の動向を注視していくとともに、今後の出入国管理及び難民認定法の法改正の議論についても注視していきたい。

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