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 平成26年7月1日安倍閣議決定は、なぜ従来の政府見解を逸脱し、憲法第9条に違反するのか(2015.4.11 山本 勝敏会員)

 

 平成26年7月1日安倍内閣閣議決定
 昨年7月1日、安倍内閣は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行いました。その中で、「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」として、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。」と述べています。

 安倍閣議決定によると、従来の政府見解とは、昭和47年10月14日参議院決算委員会に政府から提出された「集団的自衛権と憲法との関係」のことを言っています。では、この政府提出見解にはどんなことが書かれているのでしょうか。少し長いですが非常に大事なことが書かれているので全文を引用します。


 昭和47年10月14日参議院決算委員会政府提出見解
 国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を有しているものとされており、国際連合憲章第51条、日本国との平和条約第5条(C)、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約前文ならびに日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言3第2段の規定は、この国際法の原則を宣明したものと思われる。そして、わが国が、国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然といわなければならない。ところで、政府は、従来から一貫して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場に立っているが、これは次のような考え方に基づくものである。
 憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が‥‥平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命・自由及び幸福追求に対する国民の権利については、‥‥国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることから、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。
 しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまでも外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置として、はじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。
 そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、①わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、②したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。

 

 昭和47年政府提出見解による憲法第9条解釈
 今回の閣議決定が引用する昭和47年政府提出見解では、第一段落において、国際法上、主権国家には個別的自衛権のほかに集団的自衛権が認められていることが述べられています。続いて第二段落において、憲法第9条では戦争放棄、戦力の不保持を規定しているが、他方、憲法前文及び第13条にてらすと、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛権行使を禁じているとは言えないとして、憲法が自衛権を否定したものではないことが述べられています。続けて第三段落において、しかし自衛権が認められるからと言って、憲法の平和主義のもとでは無制限な自衛権行使は認められないのであって、外国から日本に対する武力攻撃が発生した場合に、自国民を守るための必要最小限度の武力行使である個別的自衛権が認められるにとどまることが述べられています。そして結論として第四段落において、憲法第9条では、わが国に対する外国からの武力行使に対処する個別的自衛権が認められるにとどまり、他国に加えられた武力攻撃を阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、国際法上認められていても憲法上は許されないことが述べられているのです。

 

 安倍閣議決定は昭和47年政府提出見解を意図的に曲解していること
 今回の閣議決定は、一体として理解されるべき昭和47年政府提出見解を意図的に第二段落及び第三段落部分と第四段落部分とに分離し、従来の政府見解の基本的な論理は第二段落及び第三段落部分にあり、外国の武力攻撃によってわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるか否かが問題なのであって、外国の武力攻撃がわが国に対するものであるか、わが国と密接な関係にある他国に対するものであるかは区別する必要がないと解釈することによって、閣議決定した範囲における集団的自衛権行使は憲法解釈として可能とするものです。しかしながら、従来の政府見解が第二段落から第四段落までを一体として理解し、第三段落において、外国によるわが国に対する武力攻撃を前提にした個別的自衛権を論じていたことは文理上明らかです。だから、昭和55年10月28日政府答弁でも、国連憲章第51条は国家が個別的または集団的自衛の権利を有することを認めているが、わが国が集団的自衛権を行使することは憲法の認めている所ではないというのが従来からの政府の考え方であると述べ、昭和56年5月29日政府答弁でも、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利について、わが国が国際法上集団的自衛権を有していることは当然であるが、憲法9条で許容されている自衛権行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるから、集団的自衛権行使はその範囲を超えるものであって憲法上許されないと答弁しているのです。今回の安倍閣議決定は、従来からの政府見解の基本的な論理が個別的自衛権の範囲内における専守防衛にある所を逸脱して、第二段落及び第三段落部分と第四段落部分とを分離し、第二段落及び第三段落部分を自分に都合よくこじつけて集団的自衛権にまで論理飛躍したものであって、従来の政府見解の基本的な論理からは到底出てこない憲法第9条違反の解釈です。

 

 安倍閣議決定は憲法秩序の破壊であること
 内閣を構成する内閣総理大臣及び国務大臣は国家権力者であることから、その権力を行使するにあたっては憲法を尊重擁護する義務があり、憲法諸原理である国民主権、基本的人権尊重、平和主義等に拘束されているにも関わらず、今回の安倍閣議決定は憲法を無視し、立憲主義に違反するものであって、このような恣意的な権力行使を認めていれば、いずれ憲法は無力化され、国民の基本的人権は掘り崩され、国民の上に国家権力者が君臨するおぞましい国家が登場することは避けられないでしょう。

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